>お楽しみコーナー>印刷なんぞ>グーテンベルク サイトマップ 最終更新日:2005/07/22

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グーテンベルクの「四十二行聖書」

グーテンベルク聖書 実見! 「四十二行聖書」

 グーテンベルクの「四十二行聖書」が公開展示されていると聞き、見てきました。かたわらにはグーテンベルクの印刷機(復刻)も展示されていました。東京オペラシティで開かれた「東京大聖書展」でのこと。残念ながら、11月19日(2000年)で終了いたしました。
 会場はキリスト教関係者の方を中心に入場待ちの込みようでした。「東京大聖書展」のメインは、何といっても2000年前、イエス・キリストが生きていたころの「聖書」と目される「死海写本」です。バチカン図書館所蔵の稀覯本もめったに見ることはできません。「キリスト降誕2000年」ということで、これらの貴重な資料が日本でも公開されたわけです。
 「死海写本」の現物(イスラエル考古局所蔵)は断片のみでしたが、本来の形である巻物状の巻子本(復刻版、日本聖書教会聖書図書館所蔵)は、なかなか立派なものです。同じく復刻版ですが、パピルスに書かれた聖書や、羊皮紙なども展示されておりました。
 しかし、なんといっても印刷屋にとっては、グーテンベルクの「四十二行聖書」が見たいものでした。

慶応大学所蔵の「四十二行聖書」、インターネットでも見られます

グーテンベルク聖書(慶応大学HUMIプロジェクトへ) 展示されていた「四十二行聖書」(右)は、慶応大学所蔵のものです。また、グーテンベルク活字印刷機は、兵庫県印刷工業所蔵とのこと。
 慶応大学所蔵の「四十二行聖書」(上巻のみ)は、インターネットできれいなデジタル画像が公開されています(http://www.humi.keio.ac.jp/treasures/incunabula/B42-web/b42/html/index_jp01.html)。聖書以外にも貴重なデジタル画像が多数掲載されており、楽しめます。

このボタンは何?

 見開きの聖書を見ると、ページの外側(製本用語では、小口〈コグチ〉といいます)に、ボタンのようなものが4個付いています。上の写真では、左上に小さいポッチが2つ見えますが、右側にも同様のものがついています。見ると、ややクラシックなカーディガンなどに付いている皮のボタンにそっくりです。
 このボタンは何? 実はこれ、インデックスなんだそうです。このボタンをつかむと、例えば「創世記」の最初のページとか、「出エジプト記」の最初のページを開けるというわけです。最初はもっとたくさんのボタンが付いていたのが、五百数十年の歴史を経て、今残っているのはわずかに4個。しかも、現存するグーテンベルク聖書の中で、皮ボタンのインデックスが残る「四十二行聖書」は、慶応大学所蔵のものだけだそうです。

「印刷=本文は同一」ではなかった草創期

 「大聖書展」の公式カタログには、グーテンベルク聖書は「2部として完全に同一な本文をもつ本は現存しないと断言してよい」(「マインツから東京へ」高宮利行氏)という言葉がみえます。
 現代の印刷・出版常識からかんがえると、ちょっと信じがたいことです。グーテンベルク聖書は、装丁や色つけはすべて特注品なので、できあがった本としては一つとして同じではないのはわかりますが、「ホントですか?」と言いたくなるところ。しかし、説明を読むと「なるほど」と印刷草創期の苦労がしのばれます。
 たとえば、「製本時に数えてみたら1枚たりないのであわてて組み版して刷り直した」「印刷途中で誤りを発見し活字を入れ替えた」などということが結構あったようなのです。今だったら印刷するときに用紙の予備は当然ですが、当時、紙(羊皮紙もふくめて)は大変な貴重品でした。貴重な印刷用紙に1枚1枚刷り上げ、1版分が刷り上がったら次のページを組み版して、また同じ作業を繰り返す。なにしろ1300ページです。長い時間のなかで、いろんなミスもあったに違いありません。それでも、出来上がりは素晴らしいものでした。

―――2000/11/24.12/16.