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グラディエーターの時代――巻物から書物へ(印刷以前・その2)
| アカデミー賞受賞おめでとう 映画「グラディエーター」がアカデミー賞作品賞、主演のマキシマスを演じたラッセル・クロウが同主演男優賞を獲得しました。「アカデミー賞は叙事的大作が好き」とか「何回かノミネートされるといずれ受賞」とか、いろいろあるらしいですが、なにはともあれ、おめでとう。大スクリーンで観たいところですが、ビデオも結構楽しめるかな。(2001/4/2追加)剣闘士とローマ皇帝コンモドゥス |
「グラディエーター」という映画をご覧になったでしょうか?
「2000年の時を超え、今、魂を揺さぶる壮大なスペクタクル・ドラマが遂に完成した!! 構想5年、総製作費1億ドル――20世紀の映画史に残る、そして、次世紀への映画史を飾る、この夏、最大の話題作」と宣伝されております。
「時は西暦180年、偉大なローマ皇帝が世を去り、大ローマ帝国の運命は無慈悲な皇帝の手に託された。巨大コロシアムでは、民衆を楽しませるため、勇敢な剣闘士(グラディエーター)たちが、死を賭けた壮絶な闘いを強いられていた。その中には、皇帝により家族を抹殺され、奴隷の身におとしめられた将軍がいた。彼は、剣を持ち、実力者だけが生き残れるその場所に、ある想いを秘めて立った。彼は、闘う。それは、勝敗のためでも、名誉のためでもない。真のグラディエーター(剣闘士)となって、皇帝への復讐を果たすためであった」「"息子を殺された父として、妻を殺された夫として、必ずや復讐を…"巨大ローマ帝国に敢然と闘いを挑んだ、一人のグラディエーターがいた。」
ラッセル・クロウがグラディエーター=将軍マキシマスを演じ、皇帝コモドゥスをホアキン・フェニックスが演じています。「監督は、『ブレード・ランナー』『エイリアン』『ブラック・レイン』など、他の監督には表現できない独自の映像世界を常に構築してきたリドリー・スコット」……。(「」内の引用は、グラディエーターのWeb
Siteより)
物語はフィクションですが、お薦めの映画、……ということで本題に入ります。
この時代、つまりA.D.2世紀ころは、文書の歴史にとって「画期的な発明」がなされた時期にあたります。
「冊子本(codex)」の発明――巻物から書物へ
このころまで、文書の保管法として一般的なのは、パピルスなどを筒状にくるくると巻いて巻物の形で保存する方式でした。
右図は、当時のローマの図書館の内部をえがいたものです。パピルスを巻き物にして、タイトルなどを記した小さいラベルを貼り、棚に並べて置かれています。なにか不便な感じがしますが、それはわれわれが、この時代に発明された書物の型式に恩恵を受けているからです。
その発明とは、羊皮紙などを重ね合わせたうえで、片側の一辺を綴じる型式で、コーデックス(codex)と呼ばれています。この画期的な発明が普及するまでにはけっこう時間がかかりました。コーデックス型の書物は、最初は「聖書」など教会関係の文書が中心でしたが、4世紀頃には多くの文書がこの型式で保存されるようになりました。
ローマ帝国の繁栄を背景に、タキトゥスやプルタルコスなどの著述家がラテン文学の最盛期をつくりだし、またそれらを読む人々が広範に生み出されたことや、キリスト教の広がりなどが、そうした転換の推進力になったのかもしれません。
映画「グラディエーター」のなかに、「偉大なローマ皇帝」が登場し、なにやら執筆している情景がチラッと映し出されています(左。上記Web
Siteより)。彼の名はマルクス・アウレリウス。長く続いたゲルマン民族との戦いの陣中で、「自己にあてて」という哲学的思索を著し(岩波文庫に『自省録』として収録されています)、「哲人皇帝」として後世に名を残しました。
この絵をさらに観察すると、文書の左の方が綴じられているように見えます。映画の時代考証が確かなら、哲人皇帝は、時代の最先端の発明であるコーデックスの恩恵をもっとも早い時期に受けた一人といえるでしょう。
筆記具の素材――パピルス、羊皮紙、書字版、……
ところで、この時代の筆記具の素材にはどんなものがあったのでしょうか?
パピルスはもっとも多くの方が連想するものでしょう。この時代にも広く使われていたようですが、エジプトでつくられ輸送されるものですから高価だったことは間違いありません。
パピルスに代わるものとしては、羊皮紙がよく知られています。羊以外にも、子牛やヤギの皮をなめしてつくられた紙が使用されました。コーデックスの発明が普及するにしたがい、保存しにくいパピルスよりも、羊皮紙がヨーロッパでは多用されることになります。
さらに、ごく薄くした木の板なども使われたようです。右図は、ポンペイから出土した壁画で、先のとがった筆と木製の書字板をもった女性が描かれています。ちょっと厚めの板が4枚ほど重なっているように見えますが、何を書こうとしているのか、ちょっと興味を惹かれる壁画です。
2000/8/10.
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